Meanwhile in Africa...

アフリカで今起こっていることを日本の皆様に正しくお伝えするため、海外大手ニュースサイトの記事を日本語で要約して発信します。

世界難民の日に寄せて -世界最大の難民キャンプの今-

6月20日は世界難民の日です。

 

難民と聞いて皆さんはどんな光景を想像しますか。

IS(イスラム国)から逃れるシリア難民。

戦火から逃れるイエメン難民。

リビアからヨーロッパを目指して決死の地中海航海に臨むアフリカ諸国・中東諸国の難民。

そして小さなボートで漂流するミャンマーロヒンギャ族

ここ最近、難民にまつわる話題は随分世界を騒がせてきました。

 

では、世界最大の難民キャンプはどこにあるかご存知でしょうか。

日本でもよくテレビに登場する、シリア難民を受け入れているヨルダンのザアタリ難民キャンプは人口約8万人。

この春日本でも公開された映画「グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~」の舞台となったケニアのカクマ難民キャンプは人口約18万人。

 

世界最大の難民キャンプは、人口約35万人を擁するケニアのダダーブ難民キャンプです。

ダダーブ難民キャンプはケニアの北東部、ソマリアとの国境付近にあります。

ソマリアでの内戦を逃れて逃げてきたソマリア難民を収容するため、1991年に設立されました。

今は2015年ですから、このキャンプはもう四半世紀もこの地に存在しているのです。

そして、四半世紀をこのキャンプで、難民として生きている人々がいるのです。

 

世界難民の日に寄せて、色々な援助機関関係者が難民のストーリーを発信しています。

今回は、ダダーブ難民キャンプで、そして世界各地で支援活動を行う国境なき医師団のケニア代表Gaudry氏が書いた記事を紹介します。

(ソース:GAUDRY: A plea for dignity for Dadaab refugees - Blogs | Daily Nation

 

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ほんの数か月前、国境なき医師団の患者の一人が、第三国定住の申請を却下されたことで自殺を図った。

このような悲劇は、ダダーブ難民キャンプのように、何十万もの人々がより良い明日を思い描くこともままならず暮らす場所においては、起こるべくして起こるものだ。

彼らはキャンプの外へ出る際には旅行許可を取得しなければならない。たとえ目的が緊急の医療措置を受けるためであっても。

彼らの生活はほぼ完全に援助に頼っている。

援助に頼った生活とは、つまり、半乾燥地帯にいながら運が良くても一日たった20リットルの水しか使えないことであり、ビニールシートで作られた仮設住宅で暮らすことであり、いつ減らされるかわからない毎月の食糧配給に頼るということだ。

 

受けられる援助の量は国際社会の「寛容さ」次第だ。その上、世界の他の地域の人道危機によっても左右される。他地域で危機が拡大すれば、全世界的な援助予算がそちらにより多く振り分けられるようになるのだから。

実際、つい先日(6月11日)からケニアのキャンプでの食糧配給を3割減らすことがWFP(世界食糧計画)から発表された。追加の予算が確保されない限り、この措置は9月まで続くという。

 

難民には理論上3つの選択肢、つまり、①母国への帰還、②第三国(アメリカや欧州諸国等)への再定住、③亡命先の国への統合、がある。

ダダーブ難民キャンプで暮らす難民はほとんど母国ソマリアへの帰還を望まない。

ソマリアでは今も紛争が続いている上、ダダーブで生まれた難民も多く、そういった難民はソマリアへの愛着をほとんど、あるいは全く持たないからだ。

第三国定住の許可は毎月数十人にのみ与えられる稀なものだ。

ケニアに永住するとしても、結局のところ難民にはキャンプに留まる以外に方法はない。

このようにして、一時的な措置として作られたダダーブ難民キャンプは、永続的な存在となってしまった。

 

現在のところ、唯一現実的な戦略として検討されているのが、ソマリアの治安回復を支援して、難民の母国への帰還を促すことだ。

しかしソマリアの紛争は長引いたままで、ソマリアを拠点とするイスラム過激派武装組織アル・シャバーブがケニアでテロ行為を繰り返すたびに、ソマリア難民が大多数を占めるダダーブ難民キャンプはテロリストの温床であるとしてケニア政府の非難の矛先となってきた。

 

キャンプの治安は悪化している。難民の暮らす状況は受け入れがたい水準だ。

国際社会は別の解決策を模索しなければならないのではないだろうか。

簡単な解決策などないだろう。

それでも我々は長期的な解決策を見つけなければならない。

この事実上の監獄で暮らす何十万もの人々に尊厳を取り戻すために。

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この記事の筆者はダダーブ難民キャンプを事実上の監獄(原文ではopen-air prison)と呼びました。

四半世紀を閉ざされたキャンプで暮らす難民の苦境を示す言葉としては、決して誇張ではありません。

 

少し前に、難民の少年へのインタビューを読む機会がありました。

今欲しいものを聞かれた少年は、こう答えました。

「僕らに武器をください。そうすれば、僕らを村から追いやったテロリストと戦うことができる。」

 

世界の歴史はいつも戦争の歴史でした。

悲しいけれど、世界から争いごとが消える日など来ないでしょう。

難民と呼ばれる人々がいなくなる日も来ないでしょう。

 

それでも、世界は変わらなければならないし、私たちはそのために何かができるはずです。

武器を欲しがる少年が一人でも減るように。

一人でも多くの人が尊厳を持って生きられるように。

 

世界難民の日を契機に、一人でも多くの人が難民に思いをはせてくれれば、世界は少しだけ変わることができるのかもしれません。